徳島地方裁判所 昭和62年(わ)481号〔2〕 判決 1988年1月11日
本籍及び住居
徳島市八万町中津浦三二番地の二二
無職(元税理士)
長瀬憲一
昭和二六年八月四日生
右の者に対する法人税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官水野美鈴出席のうえ審理し、次のとおり判決する。
主文
被告人を懲役一〇月に処する。
この裁判が確定した日から二年間右刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は、税理士として、インテリア用品の製造販売等の業務を営む第一産業株式会社の税務書類の作成、税務申告等を担当していた者であるが、同会社の取締役山岡照子と共謀の上、同会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、架空仕入れを計上するなどの不正の方法で所得を秘匿した上、
第一 昭和五八年三月一日から昭和五九年二月二九日までの事業年度における右会社の実際の所得金額が二、七七五万七、二三一円であり、これに対する法人税額が一、〇六六万二、八〇〇円であるにもかかわらず、同年四月二七日、徳島市幸町三丁目五四所在の所轄徳島税務署において、同税務署長に対し、所得金額が三八四万八、七〇六円であり、これに対する法人税額が一一一万九、二〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって、右不正の行為により、正規の法人税額と右申告税額との差額九五四万三、六〇〇円を免れ、
第二 同年三月一日から同年七月三一日までの事業年度における右会社の実際の所得金額が六七七万六、〇九七円であり、これに対する法人税額が二五一万三、一〇〇円であるにもかかわらず、同年九月二八日、前記徳島税務署において、同税務署長に対し、所得金額が一五〇万五二七円であり、これに対する法人税額が四五万四、一〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって、右不正の行為により、正規の法人税額と右申告税額との差額二〇五万九、〇〇〇円を免れ、
第三 同年八月一日から昭和六〇年七月三一日までの事業年度における右会社の実際の所得金額が三、一一五万八、九八〇円であり、これに対する法人税額が一、二三九万六、二〇〇円であるにもかかわらず、同年九月三〇日、前記徳島税務署において、同税務署長に対し、所得金額が四一九万六、二七七円であり、これに対する法人税額が一一八万九、五〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって、右不正の行為により、正規の法人税額と右申告税額との差額一、一二〇万六、七〇〇円を免れ、
第四 同年八月一日から昭和六一年七月三一日までの事業年度における右会社の実際の所得金額が七、二一一万九、四四〇円であり、これに対する法人税額が三、〇一三万九、八〇〇円であるにもかかわらず、同年九月三〇日、前記徳島税務署において、同税務署長に対し、所得金額が三七八万五、六八七円であり、これに対する法人税額が一〇六万九、七〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって、右不正の行為により、正規の法人税額と右申告税額との差額二、九〇七万一〇〇円を免れ、
たものである。
(証拠の標目)
判示全事実につき
一 被告人の検察官に対する昭和六二年一〇月六日付供述調書
一 山岡照子の検察官に対する昭和六二年一〇月一一日付供述調書
一 山岡照子の大蔵事務官に対する昭和六一年一二月一七日付、同月一八日付、同月一九日付、昭和六二年一月一三日付、同年二月二日付、同月二三日付、同年四月二〇日付、同年五月八日付、同年六月八日付各質問てん末書
一 大蔵事務官作成の査察官調査書、売上調査書、仕入調査書、外注加工費調査書、製造原価減価償却費調査書、役員報酬調査書、給料手当調査書、租税公課調査書、一般管理費減価償却費調査書、地代家賃調査書、雑費調査書、受取利息調査書、支払利息調査書、雑損失調査書、その他所得より調査書(二通)、預金調査書、受取手形調査書、売掛金調査書、仮払金調査書、預け金調査書、有価証券調査書、貸付金調査書、建物調査書、建物附属設備調査書、支払手形調査書、買掛金調査書、短期借入金調査書、未払費用調査書、長期借入金調査書判示第一の事実につき
一 大蔵事務官作成の脱税額計算書(昭和五八年三月一日から昭和五九年二月二九日までのもの)
一 押収してある第一産業株式会社法人税確定申告書一綴(昭和六二年押第五五号の五)、同メモ書一綴(同号の六)、同ベージュ色ファイルのメモ帳一冊(同号の七)
判示第二の事実につき
一 大蔵事務官作成の脱税額計算書(昭和五九年三月一日から同年七月三一日までのもの)
一 押収してある第一産業株式会社法人税確定申告書一綴(昭和六二年押第五五号の四)、同三裕商会売上明細綴一綴(同号の八)、同売掛帳一冊(同号の九)
判示第三の事実につき
一 大蔵事務官作成の脱税額計算書(昭和五九年八月一日から昭和六〇年七月三一日までのもの)
一 押収してある第一産業株式会社法人税修正申告書一綴(昭和六二年押第五五号の二)、同確定申告書一綴(同号の三)
判示第四の事実につき
一 被告人山岡照子の検察官に対する昭和六二年一〇月一三日付供述調書
一 大蔵事務官作成の脱税額計算書(昭和六〇年八月一日から昭和六一年七月三一日までのもの)
一 押収してある第一産業株式会社法人税確定申告書一綴(昭和六二年押第五五号の一)
判示第三及び第四の各事実につき
一 被告人の検察官に対する昭和六二年一〇月八日付供述調書
一 山岡照子の検察官に対する昭和六二年一〇月一二日付二六枚綴りの供述調書
(法令の適用)
被告人の判示各所為は、いずれも刑法六〇条、法人税法一五九条一項に該当するので、各所定刑中いずれも懲役刑を選択し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、同法四七条本文、一〇条により犯情の最も重い判示第四の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で被告人を懲役一〇月に処し、情状により同法二五条一項を適用してこの裁判が確定した日から二年間右刑の執行を猶予することとする。
よって、主文のとおり判決する。
(裁判官 山本恵三)